コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版 マルク・レビンソン (著), 村井 章子 (翻訳)物流の変革を知ることができる。 映画「波止場」の世界の、海の荒くれ者と呼ばれた労働者の職が無くなっていく過程を知ることができる。 戦争と無縁ではいられない業界の特殊性を知ることができる。 一人のカリスマの熱意が、世界の常識を変えた様子を、ハラハラドキドキ楽しめる。 おすすめ度:🌟🌟🌟🌟🌟
この本は、マルコム・パーセル・マクリーンというアメリカ人の人生にスポットライトを当てて、コンテナ船の登場が国際貿易と輸送に与えた影響の大きさを説明している。
マルコムは、トレーラー業から身を起こして船舶業へ進出。そして、それまでは雑多に積み込まれていた船の荷物を、規格化された箱に詰め込む、というイノベーションを起こす。
規格化された箱は、海の物流だけでなく、陸の物流も変えました。船だけの問題ではなく、輸送トラック、貨物列車も規格化され、港は大型化し、必要な設備も変わった。
運送コストは下がり、国際貿易が活発化する。
この本を読むと、規格化ということ自体が、素晴らしく価値があることなのだと、理解することができる。
かつて、港で積み荷を運ぶ男たちは、雑多な積み荷のなかからウィスキーを失敬する困った輩だが、必要な労働者たちだった。
しかし、規格化されたコンテナの登場により、荷物は箱に詰められて港に到着し、機械により船に運ばれることになったため、彼らは不要になった。
強い結束をもつ労働者が、職を守ろうとして船会社と交渉し、それでも淘汰されていく様子は、AIで職を失うと声高に叫ばれる今に通じるものがある。
発展により、職を失うこと。これは、今後も継続して起こることに違いない。
主人公マクリーンの印象的な言葉がある。大手ライバル会社の株を買ったものの、その大企業の官僚主義にうんざりして、持株を売却したときを振り返ったときの言葉だ。
常に新しい目標を追い求めて世界を変える起業家とは、こういうメンタリティを持っているのかと感嘆した。起業家と経営者を別の人種と見る視点は、私にはないものだ。