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皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章~モンティ・ライマン (著), 塩﨑香織 (翻訳) 

 皮膚は、内臓を覆う「皮」ではない。皮膚自体が臓器であることを認識し、かつ、皮膚そのものが人の外見を左右していることの不思議をあらためて認識することができる。

 皮膚は、人の健康状態を表す。表面には細菌がフローラを作っている。腸や免疫系の影響をいちばんに受ける。

 皮膚の状態が悪いと、その症状が重篤なものでなくても、多くの人がメンタリティにダメージを受ける。皮膚は、社会性を帯びている。

おすすめ度:🌟🌟🌟🌟🌟

「ある特定の人が肌に触れると、快感となるのは何故だろう。」

そう思ったことはないだろうか。

「触れ合うと花火が散った」は、文化を問わず、性的な接触を描写するときの常套句。

肌が触れ合うとき、願望と期待が起こると、感覚さえ変えてしまう。

血流が増えて皮膚の表面が温まり、発汗が促進され、皮膚全体で体毛が逆立つことで、接触刺激に対する感度がいっそう高まる。

実際に肌が触れ合うと、伝達速度の速いメカノレセプターはもとより、速度が遅く感情的な情報を伝える神経線維、さらにとてつもなく敏感な自由神経終末まで、すべてが活性化する。

この自由神経終末は、唇、乳房、外陰部にとりわけ受容器が多く集まっており、自由神経終末が刺激されると、エンドルフィンやオキシトシンなど、快感を引き起こすさまざまなホルモンが放出される。

この皮膚と脳のやり取りは、触角を通して一方のパートナーからもう一方のパートナーに伝わっていく。

ところが、なぜ特定の人だとこの作用が起こるのか、実はわかっていない。

従来、人の皮膚は、「自分」と世界の境界にあるものと考えられていた。単に、人間の中身を覆い隠すもの、皮膚の中に人はいる、という発想だ。そのため、内臓のひとつとしてみなされず、研究が進まなかった分野でもある。

しかし、皮膚こそ自分そのものであり、常に私たちを表現している。人は、肌の色により社会的な分断が起こる。宗教によっては肌にタトゥーを入れるなど、皮膚は思想を反映する。美容は人々の関心を惹き、皮膚の状態でメンタリティの健全ささえ脅かされる。ニキビができて学校に行きたくなかった10代の記憶をお持ちの方も多いだろう。

皮膚は一見すると、一枚のつるっとした表面をもつ皮のように見える。しかしそこには無数の菌が生息している。保有する最近には地域性があり、同じ行動地域の人たちは皮膚に住まう最近の種類が似通っている。さらに、皮膚のマイクロバイオームの分析データから、同居しているセックスパートナーまでわかるという。

食生活は確実に皮膚に表われるが、期待するほど簡単明瞭なものではない。腸内フローラの構成が私たちの健康に影響を与えるしくみが徐々に明らかになっているが、腸のマイクロバイオームが乱れた時には、まず皮膚に異常が表われる。免疫システムに異常がある場合も同様だ。皮膚は私たちの健康状態を示す。

皮膚を知るということは、人を知ること、自分を知ること、社会を知ることにつながると感じた。

本書を通じて、語られるトーンが非常に低温に感じて、とても心地よかった。

脳で感じる読書の感想を、温度で表す、この感じ。この感覚の謎を紐解くものだった。

読み返したくなる、お気に入りの本になりそうだ。

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